神戸・大阪間の鉄道開業の経緯と150周年プロジェクトの取組み
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東野 祥策:西日本旅客鉄道株式会社 近畿統括本部 経営企画部 課長
宮崎 好弘 :元株式会社JR西日本コミュニケーションズ監査役
神戸・大阪間の鉄道は1874(明治7)年5月11日に開業して、昨年(2024(令和6))年150周年を迎えた。
この鉄道の建設工事は、海運と鉄道による陸運との接続を目的として、港に近接する神戸を起点として進められた。その起点である神戸駅構内に設置された工場(鉄道寮神戸工場)では、1875(明治8)年
に国産初の客車制作が、1893(明治26)年に国産初の蒸気機関車製作が行われた。
また、明治政府の殖産興業政策によって神戸における造船業や関連する鉄鋼業などが発生し、発展することによって神戸経済に大きな影響を与えることとなる。
こうしたことから近代日本の産業発祥地と位置付けられる神戸について振り返るとともに、西日本旅客鉄道株式会社による「神戸〜大阪鉄道開業150周年プロジェクト」の概要について紹介する。
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新型コロナウイルスが都市鉄道にもたらしたもの
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平田 一彦:日本交通学会会員(一般社団法人交通環境整備ネットワーク審議役)
新型コロナウイルス感染症が全世界に拡大してからおよそ5年が経過した。この感染症拡大が鉄道に与えた影響については、2021年10月発行の本誌No.65および2022年10月発行のNo.69において、
都市鉄道を中心に分析を行ったところではあるが、一応の収束を見た今日、主要鉄道会社などの開示データを基に、現時点での総括を試みたい。結論として、新型コロナウイルス感染症の影響は
概ね収束したものの、その影響は通勤輸送を中心に依然として大きく、かつ各エリア、沿線ごとに跛行性が見られ、感染症収束後の行動変容の定着により、その傾向が固定しつつあるものと考えられる。
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顧客操作型マルス端末の進化の歩み
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池田 孝行 :鉄道情報システム株式会社 専務取締役 経営企画部長
顧客操作型マルス端末はJRの「みどりの窓口」で使用されている旅客販売総合システム「マルス」に接続し、お客様自身が端末を操作して指定券などを購入できるようにした端末である。
鉄道情報システム株式会社では、1994(平成6)年に初めて導入されたMV-1端末から始まり、MV-10形、MV-30形、MV-40形、MV-50形、MV-60形など、多様な機能を持つ端末を開発してきた。これにより
指定券や自由席券の発券、定期券の販売、ICカード対応など取扱い範囲の拡大と、操作性向上により、お客様の利便性を大幅に向上させてきた。
また、遠隔接客サービスを可能とするアシストマルスの導入により、窓口業務の効率化や、オペレータがお客様をサポートすることによる取扱い券種の拡大などを実現してきた。さらに、AI技術
を活用した自動対応機能や外国語自動翻訳機能などを順次実装し、お客様の利便性向上とオペレータ業務の効率化を一段と進めている。現在、当社では、お客様サービスを継続的に向上させるため、
デジタル技術を活用し、直感的で使いやすい操作画面の実現を目指した、次世代マルス端末の開発を進めている。
本稿では、顧客操作型マルス端末のこれまでの進化の歩みついて述べる。
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[鉄道施設探訪記] 第36回 安治川橋梁 -安治川をひと跨ぎしたランガー橋-
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小野田 滋:公益財団法人鉄道総合研究所アドバイザー
鉄道にまつわるさまざまな施設を紹介するシリーズである。多くの鉄道施設は見慣れた風景の中にとけこみながら、さりげなく存在している。このシリーズでは、そうした日常風景に埋もれた「逸品」にスポットをあて、その「真価」を紹介している。ここに登場する鉄道施設は、誰でもが知る鉄道施設ではなく、
むしろ知る人ぞ知るような物件ばかりだが、このシリーズによって黙々と鉄道輸送を支え続けてきた鉄道施設の存在を再認識していただければ幸いである。
安治川は、大阪市都島区にある毛間閘門で淀川から分岐し、大川となって大阪市の中枢である中之島を堂島川(北側)と土佐堀川(南側)に分流して流下したのち、再び合流して安治川となって大阪湾へとそそいでいる。
安治川は水量も豊富で川幅があり、いわゆる河川敷がなかったことから、道路にしても鉄道にしても架橋が困難であった。このため、両岸を連絡する交通手段としてもっぱら渡船が用いられていたが、1944(昭和19)年には、わが国最初の沈埋工法を用いた河底トンネルとして道路専用の安治川トンネルが完成し、
渡船以外の交通手段がようやく確保された。
安治川付近における鉄道は、現在の大阪環状線の一部を構成する右岸の西成線と、左岸の大阪臨港線に分断されていたが、これを高架鉄道と安治川橋梁で結び、環状線を構成することが計画された。
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