東日本大震災を振返る ―今後の鉄道防災に向けた教訓と課題―
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柳下 尚道:東日本旅客鉄道株式会社 常務取締役
2011年3月11日に発生した東日本大震災によって、JR東日本の鉄道施設は大きな被害を受けたが、幸いお客様の人命への直接的な被害はなかった。しかし被害は極めて甚大かつ広範囲
で、またその態様は多種多様であり、復旧作業の計画と実施に当たっては多くの課題があった。それらを振返りつつ復旧に至るプロセスとポイントを述べるとともに、被害の分析
を通じてJR東日本における地震対策の基本方針である@設備を強化する、A列車を早く止める、B万一脱線しても転覆などの大惨事を防ぐ、などについての効果と課題を検証する。
また、今回の震災の解析と検証によって明らかになった、早期検知システム、電化柱の損傷、新幹線の脱線および津波避難などの課題を明らかにするとともに、それらに対する取組み
の方針について説明する。そして、いずれは発生する可能性が高いといわれる首都直下地震に対する対策の考え方および具体策、帰宅困難者問題に対する対応策などについて述べる。
あわせて、鉄道における今後の地震対策、防災対策の方向性について述べる。
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三陸鉄道 震災から復旧への道のり
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望月 正彦:三陸鉄道株式会社 代表取締役社長
三陸鉄道は、昭和59年4月に旧国鉄の「特定地方交通線」転換第一号の第三セクター鉄道として開業した。開業当初は、地域の「マイレール意識」や陸中海岸国立公園を走る
鉄道として人気を博していた。しかしマイカーの普及、道路整備の進展や沿線地域の少子高齢化・過疎化の進行に伴い、平成6年に赤字を計上。以後赤字経営が続いていた。近年
、様々なイベントの開催や「赤字せんべい」などの物販、レトロ調車両の導入などの経営改善が続いていた矢先、2年前、東日本大震災に見舞われた。
震災発生後は速やかに状況把握に努め、運行可能区間を特定した。社員一丸となった復旧作業により、平成23年3月中に北リアス線の一部36.2Kmで運行を再開。復興支援のため
3月中は運賃を無料とした。その後、全線復旧の方針を県、沿線市町村と確認し国に支援を要望した。11月に国の支援が固まると直ちに復旧工事に着手。平成24年4月に一次復旧区間で
運行を再開。平成26年4月には全線で運行再開する見込みである。
この間、旅行業の資格を活かした「被災地フロントライン研修」、被災レール販売などにより、激減した運賃収入を補っている。三陸鉄道は、今後とも地域住民の生活の足として
、また交流人口の拡大による地域の活性化に貢献するため歩みを進めている。
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鉄道再生の理論と実際 国鉄からJR九州へ |
石井 幸孝:元九州旅客会鉄道株式会社 代表取締役社長/会長
このたび「交通と統計」にJR九州での改革の足取りを書いてみたらどうかと言われた。その時の理論・理屈と打った手立てを書いてもあまり参考にならないのではと考えた。
1987年に国有鉄道から分割民営化で発足した九州旅客鉄道株式会社(JR九州)はいかにして、評判の悪かった赤字体質の国有鉄道から優良会社に変貌したか、その理論と実際に
ついて述べるのが本論文の趣旨である。
JR九州は、民営化移行時、厳しい経営条件下にさらされたが、徹底した鉄道の利便性向上に加えて、車両デザインを経営戦略に位置付け企業文化まで高めたこと、幅広い多角経営に
取組んだこと、韓国釜山との国際高速船航路を開設したことなど他JRにない経営戦略をとったことがあげられる。しかしこのような大きな経営改革には、トップのリーダシップと社員の
意識改革が最も肝要であったと考えられる。それは国鉄時代の苦難の体験者が、それを反面教師とし、改革の最大のエネルギーとして取り組んだ結果であり、それこそ改革成功の
理論、理屈そのものであると考える。したがって、冒頭、国鉄改革の20年以上も前から国鉄の歩んできた足取りと経営上の症状・病状について言及することとした。一見立派そうに
見える時に、次なる課題が潜んでいるのである。
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九州新幹線の開業効果 |
盛澤 篤司:九州旅客会鉄道株式会社 鉄道事業本部営業部長
九州新幹線全線開業から2年経過した。ここでは九州新幹線の概要、開業効果、九州新幹線の現状、在来線を含め今後の展開について述べる。
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大阪ステーションシティの開発概要 |
西川 直輝:大阪ターミナルビル株式会社 代表取締役社長
大阪駅北側に位置するノースゲートビルディング、南のサウスゲートビルディングの開発は、西日本旅客鉄道株式会社
の旗艦プロジェクトと位置づけられ、構想を議論する段階からわずか10年にして完成した。
本件は、大阪駅を将来にわたって「大阪の玄関」に相応しい、利便性の高い、賑わいのある拠点として整備するもの。企業としてのねらいは、線区価値の向上そして事業領域の拡大にあるが、
併せて、 注目されつつも具体的動きにのらない大阪駅北ヤード開発の起爆剤として地元から歓迎され、円滑な計画調調整が進んだ。
一方、まさに大阪駅構内における大規模開発であることから、駅機能そのものの大胆な改良計画が開発に先駆けあるいは同時に実施に移された。
現在(2012年度末)、仮駅・仮商業施設を駅前広場から撤去する最終工程にあるが、大阪ステーションシティと呼称することになった全体計画概要を紹介する。 |
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飲酒運転防止の取り組み ―飲酒運転防止インストラクター養成への途― |
山村 陽一:NPO法人アスク 飲酒運転対策特別委員会委員長、元JRバス関東(株)代表取締役社長/会長
2002年7月7日、中央高速道路でJR東海バス酒酔い運転事故が発生した。酒酔い運転のため蛇行を繰返し、乗客が携帯電話で恐怖を自宅へ連絡するなどの騒動の果て、談合坂パーキングエリア内
で車と接触、運転手が逮捕された。バス業界、前代未聞の大事件だった。
それから1年間、行政・事業者あげて再発防止に努めた。2003年8月18日、お客様36名を乗せたJRバス関東2階建バスが東名高速道路で酒酔いのため蛇行運転、運転手が浜松パーキングエリアで
逮捕された。高速バスへの信頼・信用を失墜させた恥ずべき事件は、私が社長を退いて、わずか2ケ月後のことである。
「飲酒運転防止インストラクター」養成の構想は、東名高速道路事件後、再出発した飲酒運転防止活動の再反省から生まれた。
各種学習・研修と半年間禁酒しての精神科クリニックへの通院、断酒会、AAグループ(アルコホーリックス・アノニマス:米国で始まったアルコール依存症からの回復を目指す自助グループ)への
参加の結果、アルコール関連問題は、複雑で解決に大きな困難があり、専門知識が無いと対応が難しいこと、多くの人の協力が必要なことを学んだ。
以下に、飲酒運転防止インストラクター養成の構想から実現のため実施した内容等を述べる。
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国勢調査にみる東京圏の変貌 東京都心への人口回帰と通勤輸送 |
橋本 昌史 :公益財団法人航空科学博物館理事長
わが国全体の人口が減少しているなか、東京都区部、とくに都心の人口増加が著しい。2010年の国勢調査において、都区部の人口はこれまで最高だった1965年を35年ぶりに上回った。
しかし、人口が増加しているのは都区部だけでない。区部に隣接する都下・近隣3県の人口増加も続いている。その結果、依然として通勤混雑は激しく、女性専用車両が出現する有様だ。
都区部人口が長かった停滞から抜け出した1995年から17年間にわたる東京都中央区の人口増加は驚異的だが、本小論では、なぜ中央区の人口が急増できたのかその原因を探り、
都区部全体が中央区のように多くの新住民を受け入られるようになる方策はないだろか、東京圏の通勤混雑緩和に資するヒントになればと考え、取りまとめたものである。
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[速 報] 鉄道統計(平成24年度) JR・関連機関
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倉田 賢治 :一般財団交通統計研究所 鉄道資料館
鉄道に関する基本数値(社別の線区数、駅数、運輸成績、社員数、損益計算書、貸借対照表等)を各種資料から集約した統計資料です。 JR各社だけでなく、大手民鉄、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の情報も一部掲載しています。
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一般財団法人 交通統計研究所の発足にあたって -信頼され期待される共同利用機構へー |
塩津 巌:一般財団交通統計研究所 理事長
当研究所は、もともと、交通統計の研究・調査を行い、広く公共の用に供し、交通運輸の発展に寄与貢献することを目的に、1962年(昭和37年)、運輸省(現国土交通省)の許可を得て設立されました。
交通統計をキーコンセプトとして設立された日本で唯一の財団法人です。
このたび公益法人制度改革により、財団法人 交通統計研究所は、さる平成25年4月1日、一般財団法人に移行しました。
新しい研究所の経営は、新しい定款により、新しい陣容で行います。倍旧のご指導ご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。
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